宮脇先生のインタビュー記事 6/10 毎日新聞

宮脇先生が「いのちを守る森の防潮堤」についてインタビューに答えています。
記事を掲載します。

この人に聞きたい:宮脇昭さん

 東日本大震災で発生した災害廃棄物(がれき)などを混ぜた盛り土に植樹して造る「森の防潮堤」構想に賛同する県議会の全59議員が、超党派による推進議員連盟を発足させた。構想はがれきの有効な処理方法の一つになり得るのか。構想を提唱する植物生態学者の宮脇昭・横浜国立大名誉教授(84)に聞いた。

 −−県議会が議連を発足させた背景には県内や広域での焼却処理が思うように進まない危機感があります。

 ◆一番困ってらっしゃるのは現場の被災者の皆さん。がれきはエコロジカルな地球資源なんです。環境省は「焼かなきゃいけない」と言っているけど、亡くなった方の思い出や生き残った方の生活のすべてが残っている。それを安易に焼くんじゃなしに、使えるものは使う。これまでの松にこだわらず、土地本来のタブノキやシイの木などの苗をそこに植える。3年たったら管理はいらない。あと2、3年たったらがれきは焼かれてしまうので、今すぐやらなきゃ駄目です。

 −−木質がれきを埋めた場合、メタンガス発生や陥没の危険性も指摘されていますが。

 ◆幅100メートル、高さ22メートル、南北300キロの防潮堤を造れば、がれきは全体の4・8%にしかならないんですよ。土と混ぜて同じようにやれば、陥没するとの指摘はバカなことです。木質が大事で、これは栄養のかたまりですから。

 −−木質の方が埋め立てに適していると。

 ◆有機肥料ですから、森を作るのに最高ではないでしょうか。木質の資源がゆっくり分解され、隙間(すきま)ができて、根から酸素が入る。もし危ないと思うなら、やりながら考えてください。やりもしないで、過去の法律・条例にこだわって引き算ばかり。やめてほしい。

 −−防潮堤は国土交通省、防災林は農林水産省、がれきは環境省。所管が3省にまたがっています。どう突破しますか。

 ◆新しいことはトップダウンじゃないとできない。部下に任せると縦割りの中で自分のことしか考えないから。今こそトップの先見性や決断力や実行力が問われる時代。危機はチャンスなんです。日本の官僚機構は素晴らしかったけれども、危機には機能しない。トップが自分の責任において総合的に判断すべきです。

 −−3月に細川護熙元首相とともに野田佳彦首相と会い、構想の推進を要請しました。

 ◆細川元首相とは熊本県知事時代に森を作る運動をやっていたんですよ。電話をかけたら「協力する」と言ってくれました。私は野田首相に「消費税でがたがたしている、そんなことは5年、10年で終わってしまうけど、命を守る森は今の首相や知事にしかできないんですよ」と言いました。首相は「すぐやる」とはおっしゃらなかったけど、十分ご理解いただいたかと思います。だんだんと前向きに動き出しています。県や仙台市の主導でこの仙台平野で一つ例を作り、全東北の海岸に広げたいです。

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 がれきを「資源」ととらえる宮脇氏が、プラントを新たに建設しての焼却処理を「愚策」と切って捨てていたのが印象的だった。
 がれきに関しては、細野豪志環境相が仙台平野で埋め立て・再利用して防災林を整備する方針を示している。ただ、主に埋め立てに使うのはコンクリート片で、宮脇氏が主張する木質系については、細かく砕いてチップ状にして使う方針だ。木質系の利用を拡大できるのか、宮脇氏らの今後の活動を注視したい。

 (毎日新聞 2012.06.10)