森の防潮堤計画の実施事例を紹介します。
場所は神奈川県湘南海岸です。
ここに延長11.4kmにおよび、総面積85.3haと言う海岸林があります。
相模湾の波打ち際を走る国道134号線は戦前より砂防林の植林が行われてきました。
かつては飛砂により道路が砂で埋まるほどの被害が出ていたのですが、植林後にはその被害も徐々に落ち着いたといわれています。
ところが戦後の燃料不足の時期にクロマツが伐採され、砂防林は荒廃を極めました。
そこで、昭和40年代より再び砂防林として海岸林の復旧が進められます。
海岸林の復旧では、昭和60年代に横浜国立大学教授であった宮脇昭氏の指導により、クロマツ林の樹林下に広葉樹の苗木を植栽することによる針広混交林化が試みられました。
昭和62年と平成2年の2回にわたる植樹祭によって合計30万本の苗木が植栽されました。
植栽後25年を迎えようとする今日、湘南海岸の海岸林はマツ林の樹冠下まで大きくなったタブノキ、スダジイ、ヤブツバキ、ヤマモモ、ヤブニッケイ、ヒメユズリハ、モチノキ、ネズミモチの下にウバメガシ、トベラ、マサキ、シャリンバイが低木層を構成する多層構造の樹林を形成しています。
国道134号線に沿って伸びる樹林は、海岸の強い潮風、飛砂、高潮から生活を守るだけでなく、交通の大動脈の喧騒・振動・粉塵を軽減し、住宅地や海岸の快適性を高めています。
万が一の大地震、大津波には、被害を軽減する「減災」効果を発揮してくれるでしょう。
様々な生物の息づくこの海岸林の中には、現在、「なぎさの散歩道」という歩道が整備され、市民の健康増進の場として、環境教育の教材の場として様々な価値を提供してくれています。
パンフレット:「湘南海岸風景」
コンテンツ - 森の防潮堤計画