前日の春の雪に、降り注ぐ暖かな日差しのもと仙台市東北福祉大学大講堂にて「いのちを守る森の防潮堤プロジェクト推進シンポジウム」が開催されました。
全国から800人にのぼる参加者においでいただきました。
概略と共に、内容をご報告します。
1)黙祷
東日本大震災の多くの被災者の方々を偲び、黙祷をおこないました。
2)主催者挨拶
NPO法人「国際ふるさとの森づくり協会」理事長 高野義武
・世界中がこの復興に注目している。
・進捗が滞り復興の障害となっている瓦礫処理において、大きな解決策となる提案である。
3)報道が伝える東日本大震災 報告:河北新聞社
株式会社河北新報社 編集局次長 瓶子吉明
・震災以来被災地の住民に寄り添った視点を貫き続けてきた。
・瓦礫処理の問題について3/4の紙面で特集する。
・文明の転換点として、見直す必要がある。
4)調査結果報告「東北太平洋岸の植生調査報告」
(財)IGES-国際生態学センター主任研究員 目黒伸一
・青森県三沢市から福島県南相馬市にわたる100箇所にて植生調査を実施した
・タブノキの北限を探り、岩手県山田町船越まで北上した
・シイノキ、カシ類においても従来の生息域より北で生育が確認された
・アカマツ、クロマツを海岸林に用いる事には疑問が生じる
5)基調講演「いのちを守る森の防潮堤」
(財)IGES-国際生態学センター長 宮脇昭
・潜在自然植生理論にもとづく、ふるさとの木によるふるさとの森づくりとは。
・震災瓦礫を植栽基盤に用いることで木々の根の成長を促し、瓦礫処理も進めることが出来る。
・国内海外1,700箇所以上、合計4,000万本にのぼる森づくりの事例を紹介。
・ドイツでは、分解可能な木質のものは、焼くことを禁じられており土に還元する。
他方日本では土に埋めることを禁じ、焼却することが推奨されている。
6)講演「ヨーロッパ(北海沿岸)における防潮堤の過去・現在・未来」
ドイツ ハノーバー大学教授 リチャード・ポット(Richard Pott)
・1,000年以上にわたる北海沿岸地域で行われてきた防潮堤と高潮の戦いの歴史
・第二次世界大戦において発生した戦災瓦礫を利用した高台公園の事例紹介
7)自治体、企業の取組紹介
いのちを守るの防潮堤計画に賛同し、共に実現を目指す被災自治体の首長、そして企業の取組を紹介します。
・液状化現象にて75,000m3の土砂が発生した。
・森の防潮堤計画の先駆けとなる植樹祭を12月18日に実施した。
幅約10m×延長75m、面積750㎡に20種類2,540本を500人で植栽。
・イオン財団のバックアップを受け、今後沿岸の森づくりを推進。
合計6kmにおよぶ防潮林を植樹する。
・町民の1割が犠牲となり、いまだに479人の行方不明者がいる
・1mもの地盤沈下がおき、学校・病院等自治体設備も大半が流失した
・職員も多くが犠牲となり、町民の流出も止まらない。いまだ「流血中」の状態にあると言える。
・国交省の復旧防波堤の計画高が14.5mという5階建ての建物に匹敵する高さで計画されている。
海の見えない狭隘な土地に閉じ込められるようで受け入れがたい。
・森の防潮堤によって海と共に生きる町で在り続けたい。
・全社生産拠点にて植樹を予定。
・国内生産拠点での森づくりは完了。合計50万本におよぶ植樹を実施した。
・海外拠点を含め、全計画の46.7%が完了したところ。
・2017年までに完遂予定
・苗木の育苗、無償提供を実施しており、毎年10,000本の提供を行っている。
・今年G.W.に大槌町にて森の防潮堤となる幅15m、延長50mの植樹を実施する。
・市民150人が犠牲となり、700戸が流失、5,000戸が被害に遭った。
・市の10%が海抜0m地帯になるという、地盤沈下被害最大の自治体となった。
・「千年希望の丘」構想を計画。日本のモデルとなる事業であり、世界にアピールできる復興にしたい。
・今年5月に民間企業からの支援を受けて、森づくりを行いたい。
・瓦礫の植栽基盤利用に法令の壁がある。
・全市民71,000人の内60,000人が避難をするという事態に至った。
・いまだに43,000人が避難生活を行っている。
・政府の終息宣言は自治体を窮地に追い込むことになっている。
・さまざまな法令の壁があるが、なんとか解決し森の防潮堤づくりを実施したい。
7-6)三菱商事株式会社
三菱商事株式会社 環境・CSR推進部長 秋田実
・1990年のボルネオ・アマゾンや1991年マレーシア植樹など、宮脇昭先生の指導の下海外にて植樹事業を行ってきた。
・今後4年間にわたり、年250万円の助成を年間200団体に実施していく。
7-7)トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社 常務役員 永田 理
・愛知堤工場を皮切りに全世界の生産拠点で森づくりを実施しており、これまでに43万本を植樹してきた。
・協力会社の取組の紹介((株)三五、豊田合成(株))
・民間企業、NPO法人と情報共有を図り、ネットワークで繋ぐ。
・被災自体体から、企業から、市民からの声を中央官庁へ届ける窓口として機能する。
8)シンポジウム決意表明
いのちを守る森の防潮堤推進東北協議会 会長 日置道隆
・輪王寺での10年間にわたる森づくりの実施事例紹介
・コンクリート構造物は完成した瞬間から劣化が始まるが、森の防潮堤はそれ自体が命であり、世代を代わりながら循環し価値を生み出し続ける。
・協議会の活動内容①苗木づくり 20万粒採種、10万potの苗木を育苗中
②普及啓蒙活動
③施工できる体制づくり
上記活動を通して、いのちを守る森の防潮堤計画の実現を目指す。・自然と共に生き、共有・共生をしてきた日本人が世界に誇れる一大事業である。
(敬称略)