岩沼市が広葉樹を活用した多重防御策の防潮林を造成することを表明しました。
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広葉樹で防潮強化 白砂青松の浜変ぼうか
東日本大震災の津波で被災した海岸防災林の再生に、従来のクロマツなどの針葉樹に加えて広葉樹を採り入れる計画が広がりつつある。「白砂青松」と言われた日本の浜辺の姿が、変わるかも知れない。
「マツ単体より強く」 岩沼市が人工丘
岩沼市では津波で297ヘクタールの海岸防災林が浸水し、クロマツやアカマツといった針葉樹の多くが根ごと抜け出る「根返り」や倒木の被害にあった。倒木が内陸に流れ、住宅などの被害を強めた。
同市の海岸に近い防災林は国が復旧事業を行うが、それに加えて市は、津波に対する「多重防御策」として、より内陸にがれきを利用した人工的な丘を新たに造ることにしている。市の計画では、2017年度までに高さ15メートルほどの丘を80カ所造り、針葉樹に加え、広葉樹を植える。広葉樹は針葉樹よりも枝数が多く、葉っぱの面積が広いことから、津波そのものや、流失するがれきの威力を弱めるとされる。
広葉樹を採り入れるのには、生態学者の宮脇昭・横浜国大名誉教授の考えを参考にした。宮脇氏と一緒に「いのちを守る森の防潮堤」推進東北協議会を立ち上げた仙台市の輪王寺住職日置道隆さん(50)は「自然の森のように様々な樹木が混ざって多層構造になることで、マツ単体の林より津波に強い防災林を造ることができる」と期待する。
岩沼市は5月下旬に試験的に、海岸から約1キロの公園に高さ3~4メートルの丘を造ってヤマザクラなど広葉樹15~16種類を植栽する。井口経明市長は「広葉樹を使った公園は津波対策だけでなく、市民が楽しめる憩いの場になる」と話す。
針葉樹の苗木が不足 県適正樹木調査
広葉樹が津波に強いかどうかにかかわらず、震災前から、針葉樹の防災林を見直す動きは全国的にあった。針葉樹は塩害には強いが、マツクイムシによって枯れる被害が出ていたからだ。枯れれば、それだけで防災機能が落ちる。
県内での見直しの動きは津波被害で加速している。
林野庁の検討会によると、県沿岸の防災林はほぼ全域となる約1750ヘクタールが津波で浸水し、そのうち4割にあたる750ヘクタールで倒木などの被害が出た。県はいち早く防災林を復旧しようと広葉樹の利用も検討することにした。県内で育てている針葉樹の苗木では復旧に必要な本数が足りないためだ。
そこで県は、どの広葉樹が防災林に適しているかを調査。3月にまとめた報告書では、県内の海岸近くに多く自生するコナラを推奨する。生態系を乱す心配もなく、2~3年で植栽できる高さまで成長するため最適だという。乾燥や塩害にも比較的強いヤマザクラなども適しているとしている。一方で塩害や砂浜の痩せた土地に適しているとして、クロマツやアカマツなどの針葉樹も引き続き利用する。
県の担当者は「海岸近くではクロマツを活用しつつ、広葉樹をどうするか具体的に検討していきたい」と話す。
(朝日新聞 2012.04.16)