津波による海水の影響が広がっています。
地盤の低下による地下水位の上昇とあいまって、古くからの屋敷林で被害が拡大しています。
記事を掲載します。
塩害で杉や松立ち枯れ
東松島、400件で2万本伐採
「イグネ」と呼ばれる屋敷林の立ち枯れが石巻地方の海岸周辺の農家や民家で相次いでいる。東日本大震災の大津波による塩害が原因で、杉などの針葉樹を中心に葉が赤茶色に変色。震災から1年が過ぎて見えてきた新たな爪痕に、やむなく伐採を決める家も多い。同地方で代々守られてきた田園地帯の風景が消える心配が出ている。
被害がとりわけ深刻なのが東松島市だ。市は昨年10月から伐採による撤去の受け付けを開始。津波で浸水した大曲や赤井、牛網地区などの農家や民家から、ことし3月までに400件の依頼があり、約2万本を伐採した。
面積にもよるが、屋敷林1件当たりの伐採、撤去費用は250万円ほどかかる。市は震災による被災と判断し、公費で処理している。
赤井地区の農業木村順一さん(61)方は、敷地内の杉や松といった常緑樹を中心に300本伐採した。樹齢50年、高さ15メートルの杉もあったが「昨夏から葉色が変わり、完全に枯れた」という。
コの字形に自宅を囲む屋敷林は、美しい景観だけでなく、冬場に吹き付ける北西風をしのぐ役目を担う。木村さんは「強風から長年家を守ってくれた。寂しいが、伐採は仕方がない」と嘆く。
県海岸地域の津波被災地域で土壌塩分濃度測定や再造林といった独自調査を進める県林業技術総合センターによると、南三陸町などでも同様の枯死が目立つという。
同センターは「津波をかぶり、その塩分で根が傷み、吸水障害を起こしたのが要因。雨水で脱塩が進んだものの、植栽する際は塩分濃度を測定した上で対処すべきだ」と助言。「枯れた場合は倒木による2次災害の恐れがある。早期伐採が必要だ」と指摘している。
(三陸河北新報 2012.04.19)