陸前高田市に「森の防潮堤」計画 7/5

岩手県陸前高田市で「森の防潮堤」計画が動き始めました。
記事を転載します。

海沿いに立つタブノキ(左)。津波に流されてきた漁具や車を手前で押しとどめ、内陸側にある神社には被害がなかったという(4日午後、陸前高田市広田町で)
読売新聞7/5

陸前高田市で、震災で生じたがれきを混ぜた土塁の上に広葉樹を植え、津波に備える「森の防潮堤」を整備しようとの計画が持ち上がっている。防潮林の整備にがれきを活用する方針を政府に提案した宮脇昭・横浜国立大名誉教授(植物生態学)が3日、同市を訪れ、住民や復興支援活動にあたる企業関係者らと実現に向けて方策などを話し合った。

 宮脇名誉教授は、震災直後から被災地の海岸沿いにがれきで堤防を造り、木を植えて防潮林とする案を提唱。この提案を参考に、政府は3月、被災地の防潮林や公園整備にがれきを活用する方針を決定した。

 宮脇名誉教授は3日、市内を視察し、住民らと計画について話し合った。

 計画案では、流木などのがれきから有害物質を取り除き、土と混ぜ、高さ約20メートルの土塁を構築。市内に自生し、5~6メートルの深い根を張る広葉樹のタブノキやヤブツバキなどを植える。さらに雨などで土塁が崩れないよう、山口県美祢市の造園業「吉工園」が開発したコンクリート製の「ブランチブロック」や岩で囲う。

 コンクリートの防潮堤と違い、隙間のある防潮林は津波の勢いを半減させ、引き波で人や物が海に押し流されることも防げるという。既に千葉県浦安市や仙台市などで整備が進んでいる。

 宮脇名誉教授は「犠牲者の遺品などが混ざるがれきでできた防潮林は、犠牲者の魂をまつる『鎮魂の森』になり、津波から市民の命を守る森にもなる。ぜひ実現させたい」と話している。

 仮設住宅に住む同市広田地区集団移転協議会の村上俊之事務局長(49)は「安価で強度もあり、がれきも処分できる。緑の防潮堤なら目にも優しい」と語った。宮脇名誉教授らは今後、市民に賛同を呼びかけ、市や県に提案していくという。

(読売新聞 2012.07.05)